スポーツ選手の心技体→「心」を鍛えるメンタルトレーニング法を伝授

自己紹介

コラムをご覧の皆さん。はじめまして、河津慶太と申します。私は九州大学の大学院でスポーツ心理学を学び、同大学院にて博士号を取得し、現在は同大学院に学術協力研究員として所属しています。また、大学院に所属している間、学会での研究発表やメンタルトレーニングの実践などを経て、日本スポーツ心理学会が認定する「スポーツメンタルトレーニング指導士」の資格を取得いたしました。

これからこちらで、スポーツメンタルトレーニングについての基礎的な話から、応用的な話まで、事例などを交えながらできるだけわかりやすく説明していこうとおもいます。よろしくお願いいたします。

それでは、早速はじめていきましょう!

 

メンタルトレーニングとは、何を、どう鍛えるトレーニングなのか?

 

「メンタルトレーニング」という言葉は、ここ数年の間に、専門家や一部のトップアスリートだけでなく、広く一般の人の間でも浸透してきたように思います。にもかかわらず、その内容に関しての理解はまだ十分ではないようです。つまり、一般の人の間では、「メンタルトレーニングって最近よく聞くけど、“何を”、“どう”鍛えるトレーニングなの?」というような感覚なのではないでしょうか?以下にこの一般的な問いに対しての回答をしていきます。

 

競技者が鍛えるべき「メンタル」を具体的に言うと?

この問いに対するひとつの回答として、「心理的競技能力」という概念があります。これは、今までスポーツに携わる人たちの中で、経験的に「心技体」の「心」や、「精神力」という一言で表されてきたものを明確にした概念で、スポーツ競技に必要な心理的な能力を、「競技意欲(競技に対するやる気)」、「精神の安定・集中(試合中に焦ることなく、自分のプレーに集中する能力)」、「自信(自分ができると信じる力)」、「作戦能力(試合中の予測力や判断力)」「協調性」の5つのカテゴリーに分類したものです。

これを見ると、今までぼんやりしていた“何を”鍛えるのか?というところがイメージしやすくなるのではないでしょうか?

 

“どう”鍛えるのか?

メンタルトレーニングの目指すところは、一言で言うと「スキルを習得する」ことです。例えば、試合中に過剰に緊張してしまう選手(上記の「精神の安定・集中」に問題がある選手と考えられます)がいたとします。こういった選手に対して、よく紹介されるスキルとして「腹式呼吸法」があります。

このスキルは、人間がリラックスしているときに起こる腹式呼吸を、自発的に行って精神をリラックスさせるというものです。要はこのスキルを、試合中の緊張する場面で効果的に使いこなせるように練習していくということです。

このことからわかるように、メンタルトレーニングというものは、大事な場面で落ち着けるようになりたいのなら「落ち着くためのスキル」を、日々の練習でやる気を出したいのであれば「やる気を出すためのスキル」を、それぞれ長期間かけて学習、訓練していくというものです。

「サッカーのシュートのスキル」や「野球のバッティングのスキル」を練習していくことと本質的には同じことです。メンタルトレーニングに対するよくある誤解の一つに、「一つのきっかけで劇的に変わる!」のような認識がありますが、メンタルも日々の積み重ねが大事なのです。

 

<参考文献>

  • スポーツメンタルトレーニング教本 大修館書店、2002年、日本スポーツ心理学会 編
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