チームのリーダーに必要な魅力とは?

こんにちは、河津です。今回はチームのリーダー(監督、コーチ、キャプテン)になっている方たちに向けたお話です。私の大学院生時代の研究テーマが「チーム」や「チーム内での対人関係」「チームワーク」だったのでその時の自分の研究内容が話題の中心となります。

なので、もしかしたら、今回は小難しい話になってしまうかもしれません・・・

できるだけ簡単にお話ししようと思いますので、興味がある方、時間のある方、じっくり読んでみてください!!

人はどんな人に魅力を感じるのか?

はじめに、人が他の誰かに対して魅力を感じるメカニズムについてお話ししましょう!人が他の誰かに魅力を感じる時、その感じ方には大きく分けて2つの種類があるといわれています。一つは個人的魅力の過程、もう一つは社会的魅力の過程です。

個人的魅力の過程とは、その人の容姿や個人的な特性、その人との個人的な対人関係を経て魅力を感じることです。簡単に言うなら、「こいつといると楽しいな~」とか、「こいつとはなんか気が合うな~」というようなものです。この時感じる魅力は、他の誰かで代えがきくのかと言えばそうではありませんね。

社会的魅力の過程とは、自分が何かの集団に所属していることが前提で感じる魅力のことです。この記事を読んでいる皆さんも、現在、もしくは過去に何かの集団に所属し活動していたと思います。学生の頃の部活動、会社のプロジェクトチーム、ダンスやピアノレッスンのクラスなどです。

それぞれの集団で活動している時、皆さんはその集団で求められるものをより多くより強く持っている人に魅力を感じませんでしたか?サッカーチームにいるのであれば「サッカーのうまい人」、会社のプロジェクトチームであれば「プロジェクトに多く貢献している人」などです。

この時感じる魅力は他の誰かでも交換可能ですね(例えばサッカーのうまい人はチーム内に何人もいるでしょう?)。

前者の魅力を言葉にするなら「親近感」や「好意」、後者の魅力は「尊敬」や「信頼」といったところでしょうか?この2つの過程はかなり意味合いが違ってきますが、どちらも人を惹きつけるものには違いありません。

チームリーダーはチームの状況とメンバーの認知をよく考えよう!

リーダーの立場になった方は、ご自分で理想とするリーダー像を持たれていると思いますが、それも上記の2つの種類に大別できると思います。もちろんどっちも持っているというのもありですね。私的にはどちらもないということはチームリーダーとしてはあり得ないと思っています。

「メンバーに嫌われてもかまわない!!」なんて思っている方は、前者の「親近感」や「好意」は持たれなくてもかまわないという意味ならありですが、さらに「尊敬」も「信頼」もされないのは違いますよね。

このように、リーダー像は様々ですが、それがはまるかはまらないかはリーダー自身の資質ではなく、実は周りの状況(チームの状況やメンバーの認知、成熟度)の方が重要になるんじゃないかな?と私は自らの研究の中で考察しています。なぜなら、人が他の誰かに抱く魅力というのは、状況(の認知)に左右されてしまうからです。

例えば、「仕事ではとても頼りになって魅力的な上司なんだけど、でも飲みに行くのはちょっとね~」なんてことありますよね。仕事の状況になればとても魅力を感じる上司なのですが、プライベートの状況になると全然楽しくないから魅力がなくなるということですね。

でもそれが「仕事について話があるから飲みに行こう」と言われたらどうでしょうか?おそらく誘われた側は、飲みの場であるとはいえ、その状況を「仕事の延長」と認知するでしょう。その場合、少しは行く気になるんじゃないでしょうか?

このような状況や認知の影響を考えると、リーダーは自分の理想とするリーダー像を体現するだけではチームのメンバーを惹きつけることは難しいでしょう。

野球チームのキャプテンが、そのチームを強くするために知識や技術を磨き、メンバーを引っ張っていこうとしても、メンバーが強くなるためではなく、そのスポーツを単に遊びとして楽しもうとしていたとしたら、チームでの活動は単なるプライベートの遊びとしてしか認識されず、そんなキャプテンの社会的魅力を十分に感じることができないかもしれません。

その場合、無理やりにメンバーを引っ張っていこうとしても余計に離れていってしまうと思います。この場合は、時間はかかるかもしれませんが、まずチーム自体を「野球で勝つために活動しているチーム」だとメンバーに認識させ、チームとして少し成長させる必要があるように思います。

それまでは、メンバーとプライベートで遊びに行ったりして個人的な魅力でただ仲良くなるのも、メンバーを惹きつけるために必要かもしれませんね。

個人的に仲良くなることは有益か?

ところで、この2つの魅力を両方感じることもよくあることなのですが、この2つの魅力は影響し合わないのでしょうか?私の研究では影響しあうという結論に至りました。特に、学生のスポーツチームなど、チームのメンバーがチーム活動以外でも、個人的な交流を活発にする可能性のあるチームは特にその影響が強いように思われます。

社会人のスポーツチームや、会社でのプロジェクトチームではチームでの活動以外でそれほど個人的な対人関係を持つ機会は多くありません、チームの親睦会と言ってもあくまでチームの活動になりますので、こういったチームでは個人的魅力を感じる場自体があまりなく、社会的魅力がとても重要になってくると思います。

しかし、学生チームとなると、授業や学生生活の中で頻繁にチームのメンバーと個人的な対人関係をもつ可能性が多くなります。そうして、個人的魅力が大きくなってしまった場合良くも悪くもチーム活動中の個人の行動に影響を与えることが考えられます。

例えば、チームが勝つことを考えるとそのメンバーはスタメンから外すべき(つまり社会的魅力は低い)なのに、普段仲が良すぎてその決断ができなくなるなどが良い例でしょう。
どのような状況でどのような影響があるのかは正直複雑すぎてよくわかっていませんが、あくまでチームをより成熟させより結果をだすためにはもしかしたら個人的魅力を高くしすぎるのはよくないかもしれませんね・・・

このように、リーダーがチームメンバーを引き付ける力には種類があり、それらは、チームの状況やその状況をメンバーがどう認知しているかで、効果がある時とない時が出てきてしまいます。リーダーは、このことをよく理解しておくことで、チーム内での立ち振る舞いをよりよく選択していくことができるでしょう。

まとめ

少し話が散らかってしまったので、最後に要点をまとめながら、チームのリーダーがどのように行動していけばよいのかを示していきたいと思います。

  1. どんなチームにしたいのか明確にする

    まずは自分がそのチームをどうしたいのかを自分の中で明確に持ちましょう。例えば、スポーツチームであれば、勝つことを目標にするのか、楽しむことを目標にするのかというったことです。

  2. チームの状況を見定める

    次に現在のチームの状況がどういったものかを見定めましょう。いくら自分が勝つチームを作りたいと思っていても、ほかのメンバーが楽しむだけのためにやっている状況ならなかなかうまくいきません。

  3. チームの状況にあった魅力を身に着ける

    チームの状況を見極めたらそれに合った魅力の出し方をしてみましょう。メンバーも勝つためにやっているチームであれば社会的魅力を高めましょう、自分自身の競技レベルの向上、チームへのコミットメントがそのまま社会的魅力になり得ます。逆にメンバーが楽しむためにやっているだけであれば個人的魅力を高めましょう、メンバーの話を聴く力を伸ばしたり、笑顔の練習をしてみたり、いろんなメンバーと遊んでみたりすることで高めることができると思います。

  4. メンバーからの信頼を得てからチーム作りへ

    チームに対していろいろな提案や働きかけをするのは最後に行いましょう。これまで取り組みからメンバーから魅力あるリーダーだと認識されていればいろいろな自分の言動が効果的にチームに影響を及ぼすことができるようになると思います。

 

<参考文献>

  • 集団凝集性の社会心理学: 魅力から社会的アイデンティティへ、北大路書房、1994年、M.A.ホッグ 著 : 広田君美 監訳
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