サッカー日本代表本田圭佑のノートのすごさ

こんにちは、今回はサッカー日本代表の本田圭佑選手が小学校の頃から続けている、いわゆる「本田ノート」について、スポーツ心理学の観点からその効果を検証していきましょう。

「本田ノート」とは?

はじめに、本田ノートの紹介をしたいと思います。本田ノートとは、スポーツ選手なら一度は監督やコーチに勧められたことがあるかもしれない、「練習ノート」と言っていいでしょう。そして、「日記」的な要素も含むものと考えてよいと思います。

本田選手とノートの出会いは割と早く、小学校三年生のときでした。大叔父である本田大三郎さんから勧められたそうです。大三郎さんは、カヌーの元東京五輪の日本代表選手。本田選手にノートを勧めた当時はカヌーの全日本チームの監督をやっていたそうです。

本田選手は大三郎さんに「強くなるためにはどうしたらいいのか?」という質問をしたところ、ノートを持ってこさせ、そこに「サッカー日誌」と書き、それを続けるように教えました。

その内容は多岐にわたるもので、とても小学三年生に続けられるものではないように私は感じました。どんな内容かというと、起床・就寝時間、脈拍数、体重(1日3回計測)、食事の内容(5大栄養素をとれているか?お米を何回噛んだか?等)、排便の様子、練習内容の反省、などです。

小三の時、「これが10冊続いたら日本代表クラスになれるよ」と言われた本田選手、高校を卒業するころには30冊にまでつみあがっていたそうです。

セルフモニタリングの効果

本田選手が10年以上かけて何十冊も積み重ねてきたこの「本田ノート」という習慣は、スポーツ心理学の分野では「セルフモニタリング」と呼ばれており、メンタルトレーニングの土台と言ってもよいほどに重要なものです。セルフモニタリングとは読んで字のごとくセルフ(自分)で自分の行動、思考、感情などをモニタリング(観察)することです。これがどんなに重要で効果のあることか、以下で紹介していきましょう。

効果その1「気づき」

セルフモニタリングの最も重要な効果と言えば「気づく」ことです。

「試合前日、●●やっているときって調子いいな~」などのコンディショニングに関することであったり、「試合中いい感じで体動いていたけど、頭の中は●●な感じだったな~」などの試合中の自己コントロールに関することであったり、「チームメイトの●●のことがあまりよくわからないけど、●●のことで一緒に話ができそうだなー」などのチームメイトとのコミュニケーションに関することであったり。

自分の考え方や、行動のパターンが試合でのプレーやチーム内での人間関係にどのように関係しているのか、またそれによって自分がどんな気持ちや感情になったのか、そういったことをはっきりと認識できるようになるということです。

実はこの「気づく」ということ自体が、メンタルトレーニングにおいてとても重要なことになるのです。「気づく」ということは、例えるなら、病気の時にどんな病気なのか、原因がわかることと言えます。つまり、そのあとどうすればいいのか、対処法を考えやすくなるのです。

そしてこうしたことが最終的に自分をゾーン状態に導くきっかけとなりえます。それに関してはこちらの記事も併せてご覧いただくとより良いと思います。

試合中にゾーンに入る確率を上げる方法!

効果その2「やる気の維持」

これもまたセルフモニタリングの効果の一つと言えるでしょう。特に目標設定などを同時に行っている場合はその目標の進捗状況などをセルフモニタリングすると、あとどれくらい練習すればよいのかの目安になります。

どこまでやればいいのかわからないという状況はやる気をくじきますので、このような練習量や時間の目安が見えてくることはやる気の持続につながります。

また、試合での失敗など、悔しい出来事について記録等をしておくとその時の悔しさを忘れづらくなりますので、選手によってはさらなる発奮材料になり、練習へのやる気等が高まることも考えられます。

いかがでしたでしょうか。セルフモニタリングの重要性について少しでも認識していただけたなら幸いです。これから始めたい!という方は本田選手ほどものすごい量を書く必要があるわけではありませんので、無理のない程度の量で始めてみてください。

 

<参考文献>

  • 実現の条件 本田圭祐のルーツとは 新装版、東邦出版、2014年、本郷陽一 著
  • ポジティブマインド スポーツと健康、積極的な生き方の心理学、新曜社、2010年、海保博之 監、 中込四郎・石崎一記・外山美樹 著
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