こんにちは。メンタルトレーニング指導士の河津です。今回もスポーツ漫画シリーズです。心理描写がリアルなスポーツ漫画として度々当コラムで紹介している「ハイキュー」から今回も取り上げようと思います。今回はプレパフォーマンスルーティーンについてです。
ルーティーンについてはこちらの記事も併せてご覧いただくとより参考になるかと思います。
心の作り方まで練習しておく!「プレパフォーマンスルーティーン」
今回のエピソードは烏野高校のピンチサーバーでおなじみ山口君のジャンプフローターサーブ前のルーティーンとそれができるまでのお話です。
以下、漫画のエピソード
春の高校バレー1回戦 椿原学園戦
セッター影山君の調子が上がらず、序盤に流れを変えるために投入された山口君、彼は今大会において自分の役割を十分に理解していました。彼は登場しあることを思い出すのです。
ハイキュー 第234話 引用
それはサーブの師匠である嶋田さんとの練習風景でした。ここで試合場面にもどり山口君がルーティーンを実践していきます。
ハイキュー 第234話 引用
このサーブで見事に相手の守備を崩し、烏野がブレイク(サーブしたチームがポイントをとること)しました。山口君は2本目のサーブもとって役目を終えました。
ルーティーンづくりのポイント
今回紹介した山口君が行ったものをスポーツ心理学分野では「プレパフォーマンスルーティーン」といいます。プレパフォーマンスルーティーンはプレー前に比較的時間があり自分のペースで行えるクローズドスキル(バレー・テニスのサーブ、ラグビーのキック、サッカーのPK、バスケのフリースローなど)の直前に行われることが多いです。記憶に新しいところだと、2015年のラグビー日本代表の五郎丸選手のキック前の動きもこれにあたります。
プレパフォーマンスルーティーンの目的は、プレーの直前に運動に関連する情報に注意を向けさせることで、運動の実行に適切な心理状態を作り出すということです。この、「注意のコントロール」が含まれているという事が最大のポイントになります。
イチロー選手のバッターボックスでの所作や五郎丸選手のキック前の所作などがルーティーンの有名どころとしてよく挙げられていますが、ただあの動きだけを真似しても全く意味がありません。大事なことは、あの動きをしている時に、イチロー選手や五郎丸選手は何に注意を向けているのか?ということです。
山口君も、
- まずどこかを見て気持ちをリセットする(嶋田さんが「リセットの視点」といっていたもの)
- ターゲットを見て決める
- 白帯のポイントを見て決める
と、自分の注意をコントロールしています。師匠の嶋田さんが言っていた心を落ち着かせる練習というのは上記①∼③を繰り返し練習しておくことでした。実際に山口君はこの一本のために何百回もシミュレーションをしたと頭の中でいっています。
動きなどは後からついてくるものです。まずは注意をどうコントロールするか?
そこを意識してプレパフォーマンスルーティーンを作ってみましょう!
<参考文献>
- 日本スポーツ心理学会 編 スポーツメンタルトレーニング教本 大修館書店
- 古舘春一 作 「ハイキュー」第234話 集英社