選手に自信をつけるにはどうしたらよいか?

こんにちは、河津です。僕が良く現場の監督・コーチや選手自身に質問されることに「自信をつけたいけどどうしたら良いですか」というものがあります。そこで今回は自信についてお話をしていこうと思います。

自信とは

まず、自信とはスポーツ心理学的にはどういったことを指すのか。説明していきましょう。一般的に自信という言葉が使われるときは、「試合に勝てそう」、「大会でいい結果を残せそう」や「全体的にうまくやれそう」など、試合や自分のプレー全般を指して言う時が多いと思います。

こういった自信は、スポーツコンフィデンスと呼ばれています。また、「自分はフリースローなら自信がある」や「フットワークには自信がある」など、特定のスキルや行動を指して使う場合もあります。これらは自己効力感と呼ばれます。

このような違いをしっかりと理解しておくと、自信をつけるための方法もより効率的に行えると思います。こちらの記事で自己効力感について詳しく解説しています。

火ノ丸相撲を心理学的に分析~スポーツ選手の自信のつけ方~

自信をつけるために個人で簡単にできる事

上記の記事では、自己効力感を高めることによって自信を高めるという話をしています。その方法は最後には必ず必要になります。

しかし、かなりの努力も要するため、なかなか継続することが難しいです。

そこで、以下では自信をつけるために一人でもできる比較的簡単な方法を紹介していきましょう。

その1:自信のある人のように振る舞う

皆さんの周りに、いつも自信(過信ではなく自信ですよ)に満ち溢れている人はいませんか?その人の姿勢や行動を見てみてください。堂々と胸を張って、何事も積極的に取り組んでいませんか?逆に自信のなさそうなひとはどうですか?背中が丸くなっていて小さく見えませんか?

自信がある時は自然と姿勢もよく、顔も前を向いていて、表情も余裕のあるものになります。自信がない時ほど無理やりにでも自信がある時のように振る舞うこと。これが自信をつける効果的な方法の1つです。

ゲン担ぎのようにも思われるかもわかりませんが実はこれにはちゃんと科学的な根拠があるのです。そもそも人間の感情と身体的な変化の関係には2つの有力な説があります。

一つは感情が生まれて身体的な変化が起きるというキャノン・バードの中枢起源説(「人は悲しいから泣く」ということ)、もう一つは身体的な変化が先に起こって感情が生まれるジェームス・ランゲの末梢起源説(「人は泣くから悲しいと感じる」ということ)です。この方法は末梢起源説を利用した方法なのです。

もちろん、この説を裏付けるような実験結果もいくつも出ています。例えば、実験の参加者にペンを唇でくわえてもらいながら(図1左)漫画を読んでもらう条件とペンを前歯で噛んでもらいながら(図1右)漫画を読んでもらう条件に分かれてもらい。それぞれの条件で漫画の評価をしてもらったところ、前歯で噛んだ条件のほうが、漫画がおもしろく評価されたというものがありました。図を見てみるとわかるように前歯でペンを噛んだほうは笑っているような口元になっていますよね。

このほかにも、棚の上のほうにものを置く作業をした後と棚の下のほうにものを置く作業をした後では、上にものを置く作業をした時のほうが、快感情がより多くみられたという実験結果もあります。

その2:セルフトーク

これは、身体ではなく心に直接働きかける方法ですね。自信がない時というのは勝手に頭の中に「もうだめだ」、「勝てない」などネガティブな言葉かけが生じてしまうものです。これをポジティブなものに置き換える練習をすることが自信をつける方法となります。もちろん、ある程度の練習が必要になるスキルなのですぐにできるというものでもありません。根気よく続けることが大事です。
言葉選びのポイントとしては・・・

・自分ができる範囲の言葉にする
セルフトークは暗示ではないので自分で信じることのできる言葉にしましょう。あまりにも突拍子もないものはよくありません。例えばサッカーだったら「ここから8人抜きしてゴールを奪うぞ!!」などは少し現実離れしすぎて心から信じることはできませんよね。

・簡潔な言葉でまとめる
あまり長いと忘れることがありますので。長くとも1文で終わるくらいのものが良いと思います。

自信をつけるためにみんなでできる簡単なこと

次に、チーム単位、監督・コーチも含めてできることを紹介していきましょう。

 

うまくいった時のほめる声掛け

チームの監督・コーチが、または選手同士で、良いプレーや選手の良いところをほめたり、前向きなコメントをしたりすることです。2015年に大活躍したラグビーの日本代表チームのメンタルコーチを務めていた荒木香織先生も、チーム1年目はいいところをほめたり前向きなコメントをしたりすることをチームリーダーたちに徹底してもらったそうです。

自信を培ううえで一番の方法は成功体験をすることです。これは別に試合に勝つことのみではありません。普段の練習の中でもプレーが成功した時や新しいスキルを習得した時など、選手が成功を感じられるチャンスはたくさんあります。

しかし、選手一人ではチャンスを逃してしまうこともあるかもしれません。そこを周りの選手、監督・コーチが補ってあげることで、選手に成功体験を効率的に感じさせることができます。

もちろん、選手によっては多少ネガティブに考えておいたほう良いこともありますし、過信を生んでしまうこともありますので、なんでもかんでもほめればいいということではありませんが、適度にほめられれば、成功した時の体や心の感覚を記憶しておくことにはつながりますので、自信がつくのは明らかです。

この時のポイントとしては、具体的に何が良かったのか明確にしてほめることです。最初に説明したように自信には全体的なもの(スポーツコンフィデンス)と特定のスキルを指したもの(自己効力感)があります。

選手が自信をつけていく過程で考えられているのは、十分な練習から自身のスキルや体力などに対する自信(つまり自己効力感)を高めていき、それが試合結果に対する自信(つまりスポーツコンフィデンス)につながるということです。つまり順番としては自己効力感を高めることが先にあると考えられます。何が良かったのかを明確にする必要があるのです。

以上、選手の自信を高める簡単な方法を紹介いたしました。つねに言えることですが個人でもチーム単位でもメンタルを鍛えることはとても時間のかかることです。しかしながら、チームで行う場合は一緒に続けていく仲間がいます。それだけで継続する負担が軽くなることでしょう。個人で行えることを練習する時でも仲間を誘ってみんなで練習をすると良いかもしれませんね。

この記事の最初で紹介した記事も自信をつけるための王道のやり方を紹介していますので合わせてご覧ください。この記事で紹介したことはあくまで補助的に使えるものだと言うことをご理解ください。

 

<参考文献>

  • ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」、講談社+α新書、2016年、荒木香織 著
  • 動きを直せば心は変わる、大修館書店、2016年、徳永幹雄 著
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