こんにちは、河津です。
今回は、強いチームを作るために、少し高度なスキルやチーム全体でできそうなことを紹介していきたいと思います。
意見をスムーズに引き出すスキル
こちらの記事でチームづくりのためのコミュニケーションのコツを紹介しています。
これらを使うことで、ある程度選手とのコミュニケーションが活発になり、こちらからの質問に対しても本音で答えてくれるようになってきたな。と感じるようになっても、選手によってはそもそも問題点や自分の思っていることを言葉にするのが得意ではない人もいるでしょう。
そんな選手に話を聴くときには以下の3点に注意しておくといいかもしれません。
簡単に答えられる質問から始める
自分の意見を言うことを苦手とする選手に対して、いきなり「今のチームに必要なことってなんだと思う?」、「チームに対して君は何ができる?」といきなり核心を突くような言い方をしてしまうとかなりハードルが上がってしまいます。
少しコミュニケーションが取れるようになったからといっていきなり深い話をするのは負担がおおきくなってしまいますので、まずは簡単に答えられる質問からするとよいでしょう。
「最近調子よさそうだね?」、「フィジカルあがってきてるね!」のようなあいさつ程度の声掛けでも大丈夫です。このような質問に「はい!」「そうですね!」などと答えていくことで選手のほうも質問に答える準備が徐々にできてきます。
大雑把な答えを徐々にほぐしていく(チャンクダウン)
人が記憶を保存する時(何かを記憶するとき)には、チャンクという塊にして保存するということができます。自分の意見なども同様です。塊にしたものを引き出す時はいきなり具体的に細分化された状態にするのは結構難しいものです。
例えば、上記のような「今のチームに必要なことってなんだと思う?」という質問をしても、いきなり、「オフェンスは~で、ディフェンスは~で、コミュニケーションの面では・・・」と一つずつ細分化した答えというものは出てきづらいものです。
質問する方の監督・コーチは常日頃からそういった事を細かく考えていますので、選手にも同じ程度の答えを求めてしまいがちになります。
そうなると、選手が同じレベルで答えられないことにやきもきしてしまうこともあるかもしれません。そうなるとそのイライラが選手に伝わって、選手が固まってしまうなんてこともありそうですね。
そんな時は、がっかりせずに相手の塊をほぐす質問をしていきましょう。
「今のチームに必要なことは何かな?」という質問に対して、「強さですね!」と答えられたら、「特にどんな場面での強さかな」というような感じです。
「選手の意見を具体的にしていくのはそもそも監督・コーチの役割だ」と日ごろから認識しておけばイライラすることもないでしょう。もちろん選手自身で考えられるように成長してもらうことも望んで当然ですが・・・
「なぜ?」でなく「なに?」という言葉を使う
「これはなぜ?」「なぜ強くなれないんだろう?」という質問は「開いた質問」と言って相手の意見を自由に引き出すための質問法としておすすめのものですが、言い方次第では相手を攻めたてている印象になってしまいます。
この「なぜ」という言葉は責任を追及するようなニュアンス(意味)が含まれるため、選手によっては責められている印象を受けてしまうかもしれません。
そんな時は代わりに「なに」を使うようにすると良いでしょう。
「なぜチームが強くなれないんだと思う?」という言い方だと「自分が悪いのかな?」と自分を責めて考えてしまう選手には、「チームが強くなれないのは何が原因なのかな?」と「なに」を中心にして質問することで、問題を客観的にとらえて考えることができるようになり応答もスムーズにいくようになるでしょう。
チーム全体で行うこと
次に、監督やコーチなどの、チームリーダーだけでなく、チームのメンバー全体ができるようなことを考えていきましょう。
チームの目標と個人の目標をすり合わせる
強いチームは、チームの目標や作戦などを共有しているというお話をしましたが。選手一人ひとりは、きちんとチームでの自分の存在価値や自分にとってそのチームで競技をすることの価値をしっかり見出しているものです。
それがあって初めてチームへのコミット(深く関わること)ができ始めるのだと思います。そこで、まずチームの目標設定とともに、個人の目標設定をしっかりとしてもらいましょう。
さらに個人の目標とチームの目標がリンクしていく(繋がっていく)ようにすり合わせると良いと思います。
選手たちは自分のためにも競技をするがそれがチームのためになり、チームのためにやっていることが個人のためにもなる、そんな形を作れれば選手たちも前向きにチームへコミットしてくれる(関わってくれる)ことでしょう。
メンバー同士のコミュニケーション向上
強いチームになるためには、最終的には選手同士が、厳しいことでも言い合えるようになることが必要になります。
そこで、今まで監督やコーチなどのリーダーが意識して変えていこうと提案したことを、キャプテンなどの上の立場の選手からでもいいので徐々に浸透させていく必要があります。
具体的には、チームリーダーを中心に何か決めごとをつくって行動をさせるということが考えられます。
例えば、記憶にも新しいラグビー日本代表、そのメンタルコーチを務めた荒木先生は、就任1年目に、チームのリーダーグループに練習中選手たちのいいところをほめる、前向きなコメントするということを徹底してもらったそうです。
これは選手たちの自信を向上させる目的があったようですが、それ以外にも選手間(選手たち)の心理的な障壁(壁)が減ってコミュニケーション促進(コミュニケーションをしやすくするため)にも役立つように思います。
特にコミュニケーション促進を狙うのであれば、決めごとを「目上の方からあいさつを必ずする」、「目上の方から声をかけ練習や競技生活の質問をしていく」などに変えると良いのではないでしょうか?
とにかく何かしら「行動を変える」ということが一番のポイントになると思います。
そのほかにもコミュニケーションの基本的な意味や効果的なコミュニケーションの知識を選手全体に何度も与える機会を持つことも効果があると思います。
このように「認知を変える」ということも行動の変化につながってくるので根気よく続ければかならず効果が出てくると思います。
最後に
今回の方法は、どんなチームでも、もしくはどんな時でもこれをやっておけばよいというものではありません。
人が関わっていることに絶対の正解はありません、これらのスキルを使うのであれば、対象(選手個人、チーム全体)が今どんな状態なのか?それを常によく見て行う必要があります。
そのことを忘れずにチーム作りをしていきましょう。
<参考文献>
- 図解 コーチングスキル.ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017年、鈴木義幸 著
- ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」.講談社+α新書、2016年、荒木香織 著