こんにちは、スポーツメンタルトレーニング指導士の河津です。
今回はテニスでの「サーブ」の成功率を上げるためのメンタルトレーニング法を紹介します。
テニスにおけるサーブとは?
まずはテニス競技の中で「サーブ」というものがどのようなものなのか、考えていきましょう。
テニスにおけるサーブは、「サーブ権を持つプレーヤーが、コート外の決められたエリアからボールを打って、相手コートの決められたエリアに入れる」というもの。
サーブが決められたエリアに入らなかった場合はフォルトとなり、一度は打ち直せますが二度目はダブルフォルトとなって、すぐに相手のポイントとなってしまいます。
サーブを打つ時は、一度手でボールを空中に投げて、そのボールが地面に着く前に打つ必要があります。各ゲーム、ラリーは必ずサーブから始まります。
また、テニスではポイントが決まってから次のサーブを打つまで、20秒の制限時間が設けられておりそれを超えてしまうと反則を取られます。
ここまでがテニスのルール上のもの。もう少し深く本質を考察していきましょう。
サーブはテニスプレーヤーにとって必須のスキル
テニスのサーブは「クローズドスキル」に分類されます。いわゆる、あまり変化のない状況の中でいつも通りのプレーを発揮するというもの。この点は前回のPKと同じになります。
しかし、サッカーのPKとの決定的な違いがあります。それは「テニスのサーブ」はトッププレイヤーになるために「必須のスキル」であるということです。
PKと違い、テニスの試合ではサーブは何本も打つことになります。さらに、一般的にプロレベルでは自分のサービスゲームはキープして当たり前、ひとつでも相手にブレイクされると、それだけでピンチになってしまうといっても過言ではありません。(キープは自分のサービスゲームを取ること、ブレイクは相手のサービスゲームを取ることです。)
つまりサーブはそれだけ自分に有利な攻撃ということです。当然、選手は練習の時間の多くをサーブに費やすことでしょう。
メンタルトレーニングを導入する視点も、当然PKとは異なってきます。
サーブは本当にクローズドスキルと言えるのか?
このように、サーブを打つ場面はテニスの試合の中でもとても多く、そしてとても重要なものになってきます。こう考えると、「はたしてサーブはクローズドスキルと言えるのか?」という疑問も出てきます。
確かに物理的な環境はあまり変わることはありません。自分の打つ場所も、相手の場所もそう変わるものではないでしょう。
私が注目するのは、選手の「認識する環境」が目まぐるしく変化するということ。例えば、ブレイクされることが命取りになるプロの世界において、自分のサービスゲームで自分が0ポイントのところ、先に相手に2ポイント取られてしまったらどうでしょう?
もし、次のサーブをダブルフォルトなんてしようものなら、相手に3ポイント目が入ります。(テニスでは4ポイント先取で相手にゲームを取られてしまいます)
つまり、相手にみすみすブレイクのチャンスを3回も与えてしまうということになります。そう考えると、0-0の時と同じ気持ちでサーブが打てるでしょうか?
また、一度フォルトを出してしまった場合は、次のサーブをミスしたら相手のポイントになります。そのなかで、安全に入ることだけを考えたサーブを打つのか?はたまたもう一度自分の全力を出すのか?もし、自分が圧倒的にポイント有利ならどうしますか?
このように、サーブを打つ局面はたくさんあるがゆえに、試合の流れによって選手は様々な状況を認識します。それによって選手の心理的状況も当然変わってきます。選手はそんな中でサーブを打つことになるのです。
そんな選手の心理的な状況を考えると、一般的なクローズドスキルとは違うかもしれませんね。
本質から見る、サーブのために鍛え方
さあ、それでは以上の点を踏まえて、テニスのサーブに関するメンタルの鍛え方を考えていきましょう。
サーブの打ち方以外に意識を向ける。意識の動きを覚える。
まずは基本的なところからいきましょう。
サッカーのPKと違い、テニスプレーヤーの皆さん(初心者は除く)はサーブを打つことは十分すぎるほど練習しています。つまりプレーの動き自体は、何も考えなくてもできるということ。
さらに言うと、これまで何度も出てきている「ルーティーン」も、上級者はすでにできていることがほとんどです。
人間は不安になると「あれ?いつもどうやってたっけ?」など自分の動きをしっかりやろうとし過ぎて、過度に動きに意識をもっていってしまうことがあります。そうなると自然な動きにならないため、いつもよりもぎこちない動きになってしまいます。
サーブの局面は先ほど申し上げたようにいろいろな心理的状況におかれます。そこで大事になってくるのは、この「意識の動き」です。
意識の動きをコントロールする
まずは、普段の練習の時や、試合で調子のいい時に自分の意識が向いているところ、頭の中をよく知りましょう。
例えば、「ボールを頭に当ててひとつ深い呼吸をし、それからボールを地面で2回ついてから投げて打つ。」というルーティーンをあなたが持っていたとしましょう。
ボールを頭に当てて深い呼吸をするときは、何に意識を向けていますか?打つボールの軌道をイメージしているという人もいれば、呼吸自体に意識を向けているという人もいますよね。あくまで自分の好調な時を思い出して考えてみましょう。
このように調子のいい時の自分の意識の動きを、体の動きとともに覚えておけば、試合中に再現するのが楽になります。
普段から意識をしてみましょう。練習ノートなどを活用するとより効果的になりますよ。
本田ノートの記事リンク
自分のリズムが狂ったら、すぐに気づけるようにしておく。
意識の動きも含めて、ルーティーンが固まったらあとはそれをキープすれば良いだけ。
なのにそれがなかなかできない…….。なんて方もいるはず。
そんな方は「いつもと違ったリズムになっていることに気づけない。」「気づくということにたけていない。」という可能性があります。
テニス選手のルーティーンを観察したとある研究があります。その研究では、上級者になればなるほどルーティーンが固まっている、という結果が出ており、さらにそのルーティーンが行われる時間もほぼ一定である、というものでした。
そして、サーブが失敗したり、うまくいかなかったりしたときは、決まってルーティーンの時間がいつもと違っていたということがわかりました。
人は焦ったりイライラしたりすると、動きがせかせかしてしまいます。
いつもよりも余裕がなくなり動きが少し早くなってしまうということですね。これがいつもの自分のリズムを崩すということ。
自分のリズムが崩れている時に、「あっ!崩れてるな!」と気づけるようになりましょう。自分の姿をビデオなどでとっておいて観察するのが効果的です。ダメな時の自分の動きをよく観察することで気づきにつながります。
気づくことができるようになればあとは仕切りなおしてやり直すだけです。幸い時間は20秒もあります。ゆっくり落ち着いて最初からルーティーンをやり直すこともできると思います。
いかがでしたでしょうか?
今回紹介した方法は、基本的な方法論になりますが、もちろん合わない人もいると思います。しかしながら、まずやってみないと合う・合わないもわかりません。是非一度お試しください。