劣等感とはいったい何なのか?対処できるのか?

こんにちは、スポーツメンタルトレーニング指導士の河津です。
今回は、「劣等感」についてお話をしていきたいと思います。
どんな場面、状況でも、あまりよくないもの、ジャマものと考えられがちな「劣等感」ですが。実際はどのようなものなのでしょうか?はたしてイメージ通りのジャマものなのでしょうか?

劣等感とは?

いきなりですが、早速劣等感の正体を暴きたいと思います。「劣等感」とは読んで字のごとく「自分のことを自分自身が劣っていると感じること」です。他人が客観的にみて思うことではありません。客観的に劣っていることは「劣等性(劣等生ではありませんよ)」と言います。

例えば、監督やコーチが選手を見て「こいつはここが他の選手と比べて劣っているな。」と思えばそこがその選手の劣等性なのですが、選手がそのことに気づいておらず、気にしてなかったら「劣等感」ではありません。しかし、もし監督やコーチがそのことを「お前は他と比べるとここができてないぞ!」と、指導のつもりで伝えた場合、それによって選手がそれを意識した場合は「劣等感」になっていきます。

このことからもわかるように、「劣等感」とは周りの人からの影響によって形作られることもあります。もちろん、周りから見れば「劣等性」はないのに、選手の性格(他者を気にする傾向、不安を感じやすい傾向など)が影響して「劣等感」として形作られてしまう場合もあります。

ちなみに、「劣等感」と同じような意味でよく「コンプレックス」という言葉が使われますが、心理学的な定義でいうと2つは別物です。「コンプレックス」とは、「ある一つの感情に色づけられた心的複合体」と定義づけられています。

簡単に言うと心の中にある、恐怖や嫌悪などの何か一つの感情(負の感情とは限りませんが)が固まってできたしこりのようなもので、普通は意識することができないものです。例えば皆さん「プール」と聞いてぱっと連想する言葉はなんですか?ほとんどの人は「水」とか「水泳」とかあたりさわりのない言葉がすぐに浮かんでくるはずです。

ただ、中には「父親」とか、一見プールとはなんの関連性もない単語がなんとなく嫌な気持ちとともに浮かんでくる人がいることがあります。こういう人にプールに関連する経験などを聴いていくと、昔小さい頃にお父さんとプールで遊んでいて、お父さんが少し深いところに自分を落とした!なんて経験があって、その時の小さかった自分には死ぬかもと思うほどの怖い思いをした。

というような話が出てきたりします。つまり、その人の中では「プール」と「父親」という一見何の関係もない事柄が、死ぬかもと思ったほどの強い恐怖心が接着剤となって塊になり、連想時の反応に無意識に影響を及ぼすしこりになっていたということです。

ちなみにこれは、私のことです。小さい頃の記憶はほとんどなかったのになぜかプールに対する恐怖心が強く小中学生のころは全く泳げませんでした・・・。父親は泳ぎを自力で覚えてほしかったんだと思いますがとても怖かったですね・・・。すぐ助けてくれましたけど。

劣等感はジャマものなのか?

次に問題となるのは劣等感がジャマなものなのか?劣等感または劣等性とはいけないものなのか?ということです。

答えはNOです!ある種この劣等感こそが個人を成長させますし。人類をここまで進化(人によっては退化とみるかもわかりませんが・・・)させたという見解もあります。つまり、自分に足りないところがあると感じることでそれを補おうとする努力が生まれ、成功につながるのです。

心理学者のアドラーは先に説明した「劣等性」、「劣等感」そして、劣等感がカギとなってできたコンプレックスで、あまりよくない認知や行動(あきらめる、適当にやってごまかす)につながってしまう「劣等コンプレックス」の3つを区別して考えました。

さらにアドラーによると、劣等感や劣等性は誰にでもあり、先にも述べたように人間の成長や成功の基礎となるものなので、それ自体が問題というわけではありません。劣等感によってできてしまう劣等コンプレックスこそが問題となるものなのです。

つまり、「自分は運動神経がないなぁ」と感じること自体はそこまで問題ではなく、運動神経がないということでネガティブな気分になり、「自分の運動神経じゃ逆上がりなんて絶対できないよ(本当はできるようになりたいにもかかわらず)・・・だからサボろう」と運動課題から逃避するという行動を起こしてしまうネガティブな一連の流れが問題であるということですね。

劣等コンプレックスを克服することはできるのか?

それでは、この劣等コンプレックスを克服することはできるのでしょうか?その答えはYESです。劣等感自体をなくすことができればいいのですがそれはとても難しいことなので、劣等感に対する自分の認識を変えていくことでそれは可能になります。

その具体的な方法は、近年ビジネスの世界でもとても注目されているストレスマネジメントの方法論に非常に共通する部分があります。その具体的方法論については別の機会にお話していきましょう。

<参考文献>

  • キーワード心理学3 記憶・思考・脳、新曜社、2007年、横山詔一・渡邊正孝 著
  • スポーツ心理学辞典、大修館書店、2008年、日本スポーツ心理学会 編
  • 心理学事典、平凡社、1997年、梅津八三 他 監修
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