こころ(メンタル)を変える手っ取り早い方法とは?

こんにちは、河津です。

今回は「自信をつけたい」の時に少しだけお話しした、体の動きとメンタルに関するお話を紹介していきたいと思います。

スポーツ心理学における心身相関という考え方

心身相関とは、心と身体は一体不可分なもので、相互に関連しあっているという考え方です。現代のスポーツ科学、医学の分野では、広く認識されています。具体例を挙げるなら、「ストレスで胃に穴が開く」などは心の不調が体に現れたものとして認識しやすいのではないでしょうか?このような心→身体(行動)の悪い影響が認識しやすいのは、実際に「胃に穴が開く」などの目に見える症状が結果として表れているからなのだと思いますが。そう考えるとその逆、身体(行動)→心の影響はイメージしづらいのではないのでしょうか?

身体と違って心の変化は視覚化が難しいことです。しかし、相関というのは双方向の影響があるとするものなので、身体(行動)→心の影響は間違いなくあると考えます。実際、心の変化を心理検査で調べた心理学の実験では、単純な体の動きが感情の変化に左右するという結果も出ています。

スポーツメンタルトレーニングにおける応用例

身体(行動)→心の影響を利用してメンタルをコントロールする方法がメンタルトレーニングの技法の中にはあります。その中でもわかりやすいものが腹式呼吸法です。以前少し紹介しましたが、腹式呼吸とは人間が最もリラックスしている時、つまり寝ている時にしている呼吸です。ちなみに寝ている時の脳波はリラックス状態を表すα波になります。

この関係を利用するわけですね、つまり緊張状態を認識した時に、意図的に腹式呼吸を繰り返すようにします。すると、脳がリラックス状態を認識しα波を出すようになります。そうすると勝手に心まで落ち着いてしまうのです。

次にメンタルトレーニングの中でよく行われる漸進的筋弛緩法を紹介します。これはわざと筋肉に力を入れてそのあと一気に抜くことで体がリラックスしている状態を意図的に作る技法です。身体が強制的にリラックス状態になるので、心がそれにつられて落ち着いてきます。具体的なやり方として、最初はあおむけで寝た状態で練習すると良いのであおむけで寝ます。次に握り拳をぎゅっと握るように前腕に力を入れます。力を入れる強さはかなり強くしてください(血圧が高い方は無理のない程度に)。10秒ぐらいたったらその力をぱっと抜きます。この時に筋肉が一気にリラックスするのを感じることができると思いますので意識をリラックスしている筋肉に持っていきます。そのままリラックスをかみしめるようにただただその感覚を味わってください。この一連の流れを、力を入れる部位を徐々に増やしながら行っていきます。例えば、最初は前腕だけ力をいれる、次は前腕と肩の2か所に力を入れるというような感じです。最終的にそれが全身にまで及ぶととても強いリラックス感を得ることができます。

最後に、特に技法としての名前があるわけではないのですが、わざとそのように振る舞うことの効果もあげておきましょう。上の二つは特にリラックスに特化した技法になっていますが。例えば、もっと前向きになりたい、自信をつけたいなどもメンタルの悩みとしては多いものです。そんな方は、まず何も考えずそのように「振る舞う」ことを意識してみましょう。さも自信があるかのように「胸を張り」、さも前向きな人であるかのように「前を向いて、ポジティブなことを言う」。それだけでも気分や感情に効果は出てきます。

人間の体の動きと感情の関係を調査した研究からわかったこととして、どうやら「上:ポジティブ」「下:ネガティブ」というような関係性があるようですね。目線は地面を見ず、上を見上げてみる、姿勢などは上に大きく伸びるようにしゃんと立つ、下にうなだれるように猫背にならない。特に姿勢などは癖になっている人もいると思いますので意識して直していけばかなりの効果が得られるのではないでしょうか?

身体(行動)とはどこまでを指すのか?

メンタルトレーニングで身体(行動)→心の影響を利用する時、注意しておきたいところがどこまでのことを身体(行動)とするのか?ということです。メンタルトレーニングの分野では、考え方や物事の捉え方までを身体(行動)と考えます。なので、物事に対する認識の仕方を変えることで心のコントロールにつなげる認知行動療法といわれる技法もあります。たとえ具体的な効果があることがわかっている腹式呼吸でも、その効果に疑いを持ってしまうと、あまりうまくいかないかもしれませんね。信じる者は救われるといいますが、わりと的を射た言葉ということです。

現在、腹式呼吸法などのように、身体(行動)→心の影響を利用したメンタルトレーニング技法を練習、使用している方は、その効果を疑わず、というか余計なことはあまり考えずにただただその技法を実行することのみに集中してみると自然と効果が出てくるはずです。

 

<参考文献>

  • スポーツメンタルトレーニング教本、大修館書店、2005年、日本スポーツ心理学会 編

 

  • 実習で学ぶ健康運動スポーツの科学、大修館書店、2008年、九州大学健康科学センター 編
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