【メンタル・コーチング】選手のやる気を損なう指導者の口癖,行動 5選

こんにちは。今回は少しドキッとする切り口で情報を提供していきます。

私がいろんなところで指導者、選手の方たちの話を聴いたり、コーチングの様子を見たりしていて感じてきたことや、実体験も踏まえながら、言ってしまいがち、やってしまいがちだけど実はあんまり選手にとっては良くないぞ!と思われるNGな言動を5つ、その理由も踏まえながら紹介します。

「期待しているから怒るんだぞ!」

これは本当によく聞きますね。ただ、この言葉を言うということは、その前に選手を怒ったということになりますよね。

ついつい感情が抑えきれず怒ってしまったのでアフターフォローでこれを言うというパターンが多いという方、つまりそれは自分の感情をコントロールできていないということになります。

アンガーマネジメントの分野で第一感情、第二感情という考え方があります。この場合で言うと、「選手への期待」が第一感情、期待していた選手にその期待を裏切られた、と感じてわいてくる「怒り」が第二感情になります。

選手を叱るとき、第二感情を使う必要はありません。というか使ってしまうと選手との信頼関係にとってマイナスです。

「君ならやってくれると思っていたのにな・・・」と第一感情を最初から伝えたほうがよいのです。

しっかり自分の怒りをコントロールし、自分の気持ちを怒りに邪魔されずちゃんと伝えている指導者の方は、そもそも「期待しているから怒るんだぞ」なんて言う必要がないのです。

「あいつには負けるなよ!」

スポーツ選手、特にトップを目指すような選手は負けず嫌いが多いですよね。そんな選手の気質にはあっているような激励の言葉に思われがちですが、度が過ぎると本番での選手の過緊張や、練習に対するやる気の低下につながる恐れがあります。

スポーツ心理学的に、試合中の選手の理想的なメンタルは「自分がやるべきことのみに集中している」ことです。2018平昌オリンピックで金メダルを取った小平選手がレース前のインタビューで「自分の滑りをするだけです」とよく言っていましたが。まさにそれです。

「うまくやれるかな?」などの不安や、「ここで勝ったらえらいことだな」などの期待すら、試合では雑念になります。雑念はやがて過緊張につながります。

当然勝ち負けに固執することも雑念ですね。普段から「負けるなよ」と言われている選手が試合では「自分のプレーをすればいいんだ!」という気持ちに果たしてなれるでしょうか?

練習に対するやる気にも影響を及ぼすことがあります。熟達志向、自我志向というのですが、熟達志向は自分がうまくなることをモチベーションとして感じること、自我志向は他人を負かす、他人を上回るなどで自分の強さを確認することをモチベーションとして感じることです。

「あいつには負けるな」という声掛けはこのうち自我志向を助長させると考えられます。

自我志向がすべての状況で悪いかと言ったらそんなことはないのですが、自我志向の選手はどれだけ自分がうまくなっていても他人がそれよりうまくなっていると感じたら達成感が得られずやる気を低下させることがあります。

こういった場合は昔の自分と比べて今の自分がどれだけうまくなったか、に目を向けさせる熟達志向が重要になるんですね。

試合、練習、いずれの場合でもこの言葉の言い過ぎは禁物です。

「これができたら○○おごってやる!」

今はそもそもこういったことは言いづらいご時世ですが。要はご褒美を与えるようなことを言うと考えてください。

これも、一時的に選手のやる気を引き出させるためには非常に有効で使い勝手がよさそうなので、ついつい言ってしまいそうになりますね。

しかし、この言葉の効果はあくまで一時的であるということは知っておいたほうが良いと思います。長期的にみるとご褒美がないと何もしない選手になってしまいます。

やる気の種類には大雑把に分けると、それがやりたくてやるという「内発的(自分の内側から沸き起こる)」なものと、やらないと怒られるからやる、ご褒美がもらえるからやるという「外発的(行動を起こす意義が自分の外側にある)」なものがあります。

外発的なやる気はいくつか段階があるのですが。「やらないと怒られる」、「やったらご褒美(焼き肉のおごり、TVゲーム)がもらえる」というのはその中でも一番程度の低いもので、自分の内側から起こるやる気の部分が全くない段階です。

こういった状態でばかり選手を動かしていると、自分の内側からやる気を起こす気にもならない状態、簡単に言うとスポーツ競技であれば、その競技が好きでない、やっていても楽しくない、という状態になってしまいます。

スポーツ心理学の分野では、監督やコーチは選手の内発的なやる気を高める努力をするとよいということが定説です。

「思ったことは何でも言え!!」

これは、文面だけを見ればほんとにおっしゃる通りで、このような関係を選手と築けるかどうかは監督やコーチの仕事の一番重要な部分といっても過言ではありません。

しかしながら、今回のテーマはダメなコーチの口癖です。この言葉をいつも言っているコーチは果たして選手から思ったことを何でも言ってもらえているのでしょうか?

答えはノーだと私は思います。これをいつも言っているということは、裏を返せば、「選手が思ったことを何でも自分に言っている」と感じられていないということです。私の経験上、こういったことを自ら口酸っぱく言っている監督、コーチ(しかもだいたい高圧的・・・)ほど、「選手はこの人には言いづらいだろうなあ」という印象を受けてしまいます。

どうでしょうか?御覧の皆さんも、この言葉を頻繁に言っているときは、いまいち選手から本音で話されてないな・・・という不安があるときではないでしょうか?

選手との信頼関係を築けている監督やコーチは、こんなことをしつこく言わなくても、「どうした?」と一言声をかければ、選手がそれに応えてくれるものです。

※当然、なんでもといっても主に競技に関するもので、家庭の事情やよりパーソナルなものは程度によっては言えないこともありますが・・・

「自分で考えろ!」

これも選手が最終的に目指すところで、自分で考えることのできる選手でないとトップで戦っていくことができません。

しかしながら、まずは選手たちが自分で考えるクセをつけたり、自分で考えるための材料を身に着けたりするためには、やはり指導者が教えるという段階もあって当然です。

リーダーシップの理論の中に「状況論」というものがあるのですが、これは選手やチームの成熟具合に応じてコーチングの仕方を変えていくというもの。コーチングの仕方は大きく分けて4つ、「指示型」「コーチ型」「支援型」「委任型」になります。

スポーツチームを例に出すなら、メンバーがまだ初心者ばかりで自分たちが何をしたらいいかわからない場合、指導者がどんどん指示をして選手たちを引っ張っていく必要があります。これが「指示型」です。

少し選手たちが上達してくると、自分でも何かを決めたいという意志が現れてきます。この段階になると、指示を出しながらも本人たちの意志も尊重し、支援的行動(同意や鼓舞、激励等)、を増やしていくことが必要になります。この指示もしながら、支援的行動も増やしていく形が「コーチ型」です。

選手たちが上級者になってきたら、ほとんど自分で考えられるほど競技に対する知識がついてきているはずです。この段階になったら指示は極力減らし、支援的行動を中心にしていくことが望まれます。これが「支援型」です。

選手たちがベテランの域に達し、自立したと感じたなら、すべてを選手にまかせるようなかたちにして、選手たちを見守りながら、相談があれば対応するという形をとる。これが「委任型」です。

このように、「自分で考えろ!」という言葉は選手の状態を正しく見極めて使う言葉だということです。指導の初期からこれを言っていると選手は伸びませんし、少しずつ自分の考えが出てくる段階でこういった声掛けをしないと、上級者になってもいつまでも指導者に依存する選手になり、「自分で考えろ」と言わざるを得ない状況になるということですね。

また、指導者すら悩んでしまうような難しい問題に選手が直面した時は、一緒になって考えていくことや、「自分で考えろ!」と丸投げするのではなく、少しずつ考える道しるべを作っていきながら選手に考えさせることも必要になります。

このように、選手の成熟段階や問題の難しさなどを常に見極めている指導者であれば自然といつもこの声掛けをしているということはなくなってきますよね。

いかがでしたか?これらの5つの声掛け、口癖のようにいつも言っているという方は要注意です。これらの声掛け自体が悪いということでなく、指導者は常に「自分の感情」「選手の気質・やる気の質」「選手との信頼関係」「選手の技術的な成熟度」を見極めていかないといけないということですね。

見極めがうまくいっていないと、この5つの言葉が口癖になっているかもしれません・・・

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